こんにちは、かわきせ日記帳の木村です。
この仕事をはじめてから、それまでならしなかった思考をするようにしよう、となるべく意識しています。でもこれだけ大人になってからだと、思考はそうそう簡単には変わりませんね。とりあえず右なら左を選ぶ、しんどい時にも口角を上げるなど、簡単にできる小さなことからやっていこうと思っています。
■「成年後見人制度」の見直し始まる
2月18日(日)の新聞で「成年後見 法改正諮問へ 報酬や生前の解任 柔軟に」という記事を見つけました。小泉法相が、法制審議会(法相の諮問機関)で成年後見制度の見直しに向けた民法改正を諮問するそうです。
成年後見制度とは、認知症の人や判断能力が衰えた高齢者、また知的障害のある人などの財産管理や契約行為を家庭裁判所の選んだ後見人が代行する制度です。現行の制度では、一度利用すると本人が亡くなるまで辞めることはできません。弁護士が就いた場合は数万円の報酬を毎月支払う必要もあり、関係者からは「制度が硬直的」との指摘も出ていると言います。そこで、問題が解決したら一旦利用を終了したり、後見人の交代や報酬のあり方の見直しなど、柔軟で利用しやすい仕組みづくりを検討するのだとか。高齢化や障害福祉の広がりも予測され、今後さらに必要な制度になるでしょう。小泉氏は「制度の利便性を考えると改善の余地がある。世の中の変化に応じた制度になるよう議論してほしい」と求めたとありました。
■家族にとっては使いづらい現状の「成年後見人制度」
ちなみに、後見人がいてもご本人は日常生活のため(コンビニなどで使うようなもの)程度のお金であれば自由に使えます。なので、日常生活のお世話はご家族が行い、財産管理などは後見人に任せるといった分担をされていることもあります。なので、不動産の売却や購入や株の売買など多額の資金が動く契約のみ後見人が行うということも多いです。なのですが、今の後見人制度の利用者の世代ですと、家用の資金の口座や不動産の登記をご自身(夫)名義にして方も多いはずです(知的障害者はまた別ですが)。
若い世代では口座や家の登記は夫や妻で分けておられることも多いですが、団塊の世代(現在70代の方々)には、まだ家長制度の風習が残っている地域も多く、口座を分けるという考えすらもなかったわけです。それで何が起こるかというと、ご本人が家族のために作った口座や株も後見人からすればご本人の財産と判断されてしまうのです。ご家族がリフォームや車を買い換えようと思っても、その都度後見人の判断や許可を仰がなければお金を引き出せません。今の制度ですと、自分たちのお金なのに、ご本人が亡くなるまでずっと他人に管理される日々が続くことになるのです。ご本人がお元気な頃に依頼された任意後見人でない限り、法定後見人は家庭裁判所がランダムに選任します。ですから、ご家族とその専門家の相性が合うかどうかもかなり大事なポイントになってきます。
先ほど、ご家族と後見人の役割を分担するお話をしましたが、民法に当てはめた場合、家族を後見人にした場合、支出収入報告や契約の知識を持つ弁護士などは財産管理と契約行為を専門に行う監督後見人として就任する形になります。ただどちらにせよ、お金の使うための許可や判断を他人に委ねる制度であることに代わりはありません。知的障害の方も、子どものうちはご両親が代理になれますが、子どもさんの人生のほうが物理的に長く続くため、きょうだいや親族だけでなく専門職を成年後見人とする必要も出てきます。
■今必要なのは、透明性があって家族も使いやすい「成年後見人制度」
後見人にはやはり弁護士が多いようですが、記事にもあるように報酬がどうしても高くなります。人生の長さは誰にもわかりませんし、施設に入所する費用や医療費に加えて報酬まで……となると、二の足を踏む方が多いのもわかります。現在の後見人制度はご本人の財産保護を重視しすぎ、家族の利便性がまったく考えられていないんですよね(ご家族とトラブルがある方についての問題は、今日はちょっと横に置かせて下さい)。
また問題なのは、おひとりさまの高齢者や親亡き後の知的障害の方ですと、監視者がおらず解任もされないため、後見人の考え方一つでその財産を好きに扱えてしまう点です。後見人の大半は真面目かつ良心的に取り組まれていると思いますが、弁護士業界では、弁護士資格取消事由として急増しているのが被後見人の財産使い込みによる刑事告訴や逮捕だそうです。これも監視の目がないことや一度着任すると解任されないといった制度の影響もあるでしょう。
一人暮らしの老人や知的障害者の親なき後問題も含めて、これは誰もが避けて通れない問題です。社会の実情を反映させた上で、利用者や家族が安心して使える、また使いやすい制度になるようにしてほしいものです。