こんにちは、かわきせ日記帳の木村です。
わたしは洋裁がここ数年の趣味なのですが、まだ作れてもいないのに布を買ってしまう病にかかっています。元気だった頃は編み物で毛糸でも同じような病にかかっていたので、「気になったら今買わないと」の病が潜んでいるのでしょう。今はアメリカのメーカー生地を扱うWebショップでよく買うのですが、似ているようで微妙に違う柄は意外とあります。これがくせ者で、スワッチだと微妙な違いなのに、面積が広がると印象がかなり変わって見えるんですよね。みなさんもカーテンや壁紙選びなどで、そういった経験をされたことはありませんか?
というわけで、今日は名前だけ見たら自筆証書遺言とあまり違わないのに、内容の信頼性や将来を考えた時にかなり違ってくる「公正証書遺言」についてのご説明です。
■より信頼性が高い(けど作業が若干大変な)「公正証書遺言」
遺言書には自筆証書遺言とは別に「公正証書遺言」という方法もあります。こちらは遺言書の作成に公証役場の公証人が関わるため、大半は契約した行政書士が代理で行います。料金(公正証書遺言作成手数料、証人の日当、交通費などを含む)にご納得いただき、公正証書遺言作成の契約が交わされた後の大まかな流れとしては、1.必要書類の準備、2.文案の作成、3.公証人役場で文案を検討、4.当日の作成、5.完成後の保管、となります。
1.必要書類の準備
まずご本人には下記の資料をご準備いただきます。⑧〜⑩は取得する数や場所移動などで煩雑になりがちなので、行政書士に頼みましょう。
- 遺言者の印鑑登録証明書
- 補助証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 証人の住所・氏名・生年月日・職業を記載したメモ(依頼者が証人を選んでいる場合)
- 遺言執行者の住所・氏名・生年月日・職業を記載したメモ(相続人以外が遺言執行者の場合)
- 直近の固定資産税納税通知書(財産に不動産がある場合)
- 金融資産の資料(メイン銀行の通帳の見開きコピーなど/店番や口座番号のわかるページ)
- 貸金庫の資料(銀行名・支店名・番号のわかるメモ)
- 遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本等
- 遺贈をする場合、受け取る人の住民票
- 不動産の履歴事項全部証明書
2.聞き取りと文案の作成
ご本人から聞き取った内容(自筆証書遺言の基礎調査とほぼ同じです)と1で収集した書類を元に、行政書士が遺言書の文案を作成します。資料になるのは以下の情報です。
◇ご本人の思いと情報
・遺言を残す理由
・遺言者の情報……氏名+フリガナ、生年月日、職業、住所、本籍(住民票の写しで確認)
◇相続に関係する人について
・推定相続人の情報……推定相続人の氏名・続柄、推定相続人全員の「誕生から現在までの戸籍謄本」を元に「相続関係説明図」を作成します(左図はあくまでイメージです)。
・受遺者の情報……住民票の写しを準備します。
・予備的遺言(但し書き)……先順位の血族と配偶者は必ず相続しますが、血族では、たとえば遺言者の子が亡くなった場合は次の孫が相続します(代襲相続)。もしくは継承させたい者の氏名を伺います。
・遺言執行者について……氏名、住所、生年月日、職業の情報をもらいます。遺言執行者とは、遺言者の死亡後に遺言書の内容を実行する一切の権利を持ちます。1人または数人指定しておき、数人いる場合は「遺言執行者は単独で遺言を執行できる」権限も記載します。
◇証人
・証人……最低2名は必要。証人とは遺言書が本人の意志で作成され、内容が考えに合っているかを担保する存在です。不動産を多くお持ちの方で相続税などに不安をお持ちであれば、証人にパートナー税理士を依頼するなどの対応も行います。ちなみにご本人が証人を選ばれた場合は、住所・氏名・生年月日・職業を確認します。ただし、必要な判断能力や不当行為を防止する観点などから、未成年者、本相続に関係する相続人、公証人の配偶者4親等内にあたる人は証人になれません。これらの方を指定されていた場合は変更が必要です。
◇財産
・不動産……伺った住所を元に法務局で所在の確認をし、履歴事項全部証明書を集めます。
・金融資産……口座のある金融機関とだいたいの金額を伺います。
・動産……自動車は車検証のコピー、美術品や貴金属は鑑定書等を確認します。
・祭祀財産……有無を確認し、ある場合は受け継ぐ方の希望があるかを確認します。
◇付言
家族や親族への言葉、遺言書を書いた理由や分割の意図などを記載します。遺言書は家族に安心してもらうために作ることを意識した内容にしたいものです。
文案の項目は自筆証書遺言とだいたい同じですが、内容に問題がなければ遺言者であるご本人は署名押印をするだけです。そのため、よりスムーズに相続手続きが進むような内容や追加事項など、自筆証書遺言に比べて詳細な文案となる場合が多いです。ちなみに公序良俗に反する内容がある場合は、民法による制限があるのでご注意ください。ちなみにそうした内容での遺言書の作成の場合、行政書士は受任できません。
(文案に入れる項目の例)
・分割方法
財産を「誰が」、「どれだけ」、「何」を受け取るか、または「全財産を長男と次男に2分の1ずつ」等を記します。
・祭祀主宰者の指定
・予備的遺言
相続人が遺言者より先に亡くなった時の対応(誰にどんな分け方をするか、誰に遺贈するか、など。法定相続の場合は、子が亡くなった場合はその人の子=孫の代襲相続が多い)を、ただし書きとして付けます。
・遺言執行者と予備の遺言執行者、数人いる場合の執行について
一人だと気づかない場合があるため、執行者は数人指名します。数人いる場合、単独でも業務を進められる権利を記載しておきます。
・遺言執行者の執行時に関する指示
任務の開始や権利義務、執行業務の妨害禁止、貸金庫の開扉など
・遺言執行者に士業(行政書士など)を設定する場合は、報酬額
・付言
前半の工程だけ見ると、文案をつくるための資料探しがけっこう大変そうですね。とはいえ、実は自筆証書遺言でも同じような作業をしているので、手間としてはあまり変わらないのですけどね。後半は、3.公証人役場で文案を検討、4.当日の作成、5.完成後の保管、についてご説明します。